パストラーレ104

 築20年程の鉄骨3階建て賃貸アパートメント1室のリノベーション 。1階の端の空室にこのアパートのオーナー自身が移り住むということで、改装することとなった。特定の入居者が想定されているいうもののこれは賃貸物件であり、他の部屋も近い将来空室対策のために改装が必要な状態にある。そのモデルケースとなることも考えて間取りを検討した。

 現況は典型的ともいえる2DKの間取りだった。各部屋は引違い戸によって出入りが可能で一見フレキシブルな空間構成に見える。しかし、ソファや棚など家具の配置を考えた時に背にしたい壁面が少なく、動線との折り合いも悪い。民家の田の字型プランは各部屋の大きさにゆとりがあり、置き家具が少ない時に伸びやかで気持ちのいい空間となる。今回のように6畳が2部屋というような構成ではどうしてもその伸びやかさは生まれない。

 ここでの提案は、T字型の間仕切りを中央付近に配置し、それによって生じる大きさの異なるスペースを順に回遊できるというシンプルなものである。T字型であるということは、2つの入隅スペースを持つということだ。この入隅の大きさを変えて使い方に選択肢を与えている。今回の家具の配置は事前に打ち合わせがあったことは確かだか、もし同じような家具を持っていたならば、多くの人がこのような配置を選択するだろう。入隅部に空間的な落着きを感じるという心理を利用した自然な手がかりがそこにあるからだ。結果、この部屋ではT字部分にモノが集まり、外周部は動線となるという今までのアパートとは違うスタイルを持つものとなった。奥行き感のある空間の連続と入隅スペースの落着き感の対照性とそれを包むシンプルな素材の選択が、このアパートメントに新鮮な空気感をもたらしたと思う。

|所在地:東京都墨田区|延床面積:38.078㎡|

Photo:Atelier Yamasaki

© 2020 Atelier Yamasaki